【<Kawabata Week>河端選手インタビュー】 第3回:データのほうが、数字のほうが嘘はつかない。

日本自転車競技連盟(JCF)は、2018年の世界選手権男子ケイリン種目で日本チームに25年ぶりのメダルをもたらしたHPCJCの短距離アカデミーチームメンバー・河端朋之選手を、本人からの要請により、ナショナルチーム登録から解除しました。

河端選手はHPCJCが今の形になる前からナショナルチームの一員で、HPCJCと歩みを共にした、HPCJCの生き字引とも言える選手。そして、HPCJCのロールモデルともいえる選手で、世界選手権での銀メダル獲得により、HPCJCの将来への希望、扉を開いてくれた選手でもあります。

その河端選手へのリスペクトと感謝の気持ちを込めて、河端選手のここまでの自転車人生とHPCJCとの関わりを伺ったインタビューを全5回でお届けします。

第1回 :競輪だけでなく競技をやってみたい。(7月20日)
第2回 :思ってた以上にまだいけるなって。(7月21日)
第3回 :データのほうが、数字のほうが嘘はつかない。(7月22日)
第4回 :ラッキーがふっと湧いてくる。(7月23日)
第5回 :あとは僕が立ち上がるだけ。(7月24日)

 

第3回:データのほうが、数字のほうが嘘はつかない。

 

Q: HPCJCは、チームのひとつの特徴として、科学、サイエンスを重視していますよね。データを選手にちゃんと見てもらって、そのフィードバックをして、それに対する解決策を提供して、いわゆる、PDCAを回してくみたいなことを行っていると思うんですけど、そういうアプローチは河端選手には合ってたんでしょうか?トレーニング1本終わる毎にモニターで自分の走りを見てらっしゃることが多いという印象があったので。

 

映像のモニターですか。自分の走りは、直後に1回は見ますね、意識的に。

 

 

Q: 見ることによって自分に対するフィードバックがちゃんと得られるからっていうことなんでしょうか?

 

そうですね。自分のフォームだったり、膨らんだ場所だったり、コース取りが悪い時だったり、自分の実際走ってるイメージとビデオで見たものは、やっぱりズレがあることが多いので。そのズレをできる限り埋めたいなっていうのはあります。人と2車身くらい離して走って追いかけてるつもりが、映像見たら3.5車身くらい離れてるとか。70km/hとかになってくるとそういうところの感覚にギャップが出てくるんで、そこを埋めたいとは思っていたので、結構見るようにはしてました。ワットも自分で見たり。最初のほうは僕がみんなのワットをSRMから出してPCで見てたりもしてたんですけど、しばらくしたらみんな自分でやり始めたんで。

 

 

Q: 選手の性格によって、もっと感覚で走りたいみたいな人もいれば、データ重視みたいな人もいるんじゃないかなと思った時に、河端選手は、どっちかっていうと、後者の方で、それはHPCJCのやり方と上手くマッチした部分があられるんじゃないかなと思って。

 

それはあると思います。確かに、そうですね。

 

 

Q: 僕の勝手な想像ですけど、2010年代の後半から、2018年とか、2019年にメダルを獲ったりされてるのは、ブノワありきのHPCJCがあったからこそなのかなと。もちろん、河端選手の努力が大前提なんですけど、そこを支えるHPCJCっていう客観的なデータを重視する組織があったからこそより良いパフォーマンスを出されたんじゃないかなっていう印象を勝手に受けていました。

 

 

はい。自分もそう思いますし、言い方はあれですけど、僕自身あまり自分の感覚を信じてないっていうのがありますね。自分の走りだったり、感覚だったりっていうのは、バンクコンディションだったり、体調によって変わってくるものなんで。

 

 

Q: なるほど。それは面白いですね。もともとそういうふうに考えてらっしゃる人なんですね。

 

そうだと思います。だから、データのほうが、数字のほうが嘘はつかないっていうのは常に思っていたことで、それを基準に練習をするほうが自分には合っていましたね。僕、他の人のワットとかも見たりするんで(笑)

 

 

Q: もともと、論理的な思考というのが、ご自分の考え方の傾向としてあるなと思われますか?

 

意識はしてないですけど、計算で出せるなら計算のほうが間違いはないよねっていうのはあるので。データを重視するほうですね。感覚はちょっと難しいです。感覚がすごい人って、やっぱ、すごいんで、逆に僕は感覚が鋭くないんで。今はペダルで何ワット出したとか、何回転出したとか、スピードは何km/h出てるっていうのを、ダッシュした後に自分ですぐ見られる。昔は、ワットがマックスでいくら出てるという数値だけしか見ることができなかったんですけど、今は自分の走りのワットがこうやって上がっていって、マックスまでいって、こう下がっていくみたいな推移をグラフ化して見れるようになった。ハロンも何ワット出たかっていうのだけしか見てなかったけど、ブノワが来てからは、スタートからどういう曲線を描いてダッシュに至ったのかまでをしっかり見るようになったので。

 

 

Q: これは武器だなと思ったんですかね。

 

そういう説明のほうが僕的にはすごい分かりやすかったですね。こういう形のグラフで走ればいいんだなっていうのが分かる方が。一回上げたら下げないとか、上がったらもう上げ続けるみたいな事を、自分の感覚だけではなく、目に見えるデータとして出せるので、自分の感覚がこうなってるって思っても、データがこうなってたら間違ってるなっていうのをすり合わせができるのは、自分には合ってましたね。そういうデータで説明してくれたりするほうが、「ザーッといくんだ」みたいな擬音で説明されるより(笑)

 

 

Q: 今のお話を聞いてると、ブノワを中心としたHPCJCのやり方が河端選手に合ってらっしゃった部分も、河端選手のパフォーマンスに影響されたんじゃないかなっていう気はすごくします。

 

しますね。

 

 

明日に続きます